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コラム

その化粧品は本当におすすめ?弁護士監修・コスメ情報を正しく読む

化粧品をおすすめする化粧品広告について弁護士の荻野先生にインタビュー

テレビ、美容雑誌、YouTube、Twitterなど、私たちは日常的に化粧品広告を目にします。膨大な情報から、自分に合ったコスメを見つけるのは大変ですよね。

広告や口コミ情報の中には、消費者の誤解を招きかねない表現もあり、見分けるのは難しい状況です。広告や口コミの表現で効能効果を誤解したり、慌てて購入したりすると、合わないコスメを手にすることになるかもしれません。

化粧品の広告には、生産者と消費者を適切につなぐための法律があります。ルールを知ることで、私たちもコスメの情報を正しくとらえることができるはずです。

NARITAIでは、弁護士の荻野先生に化粧品広告についてインタビューしました。「口コミを信じていいの?」「定期購入を誤って注文してしまったら?」など、今さら聞けない疑問にも回答いただいたので、ぜひ参考にしてくださいね。

弁護士の荻野先生
弁護士 荻野 哲也 さん
福岡県出身・在住

弁護士法人 たくみ法律事務所在籍。久留米大学附設中学・高校卒。早稲田大学法科大学院を経て司法試験に合格。
交通事故案件及び企業法務案件に注力する他、薬機法に関わる広告チェックにも携わる。依頼者の不安を受け止めることを第一に、法の専門家として判例や解決例を徹底的に調査し、最善の提案を行うことをモットーとしている。
大学時代は合唱団で活動。歌うこと、体を動かすことが好きで、フルマラソンを完走した経験もあり。

目次

化粧品の広告で禁止されている表現

まずは、化粧品の広告・口コミで禁止されている表現を見ていきましょう。

よく見かける5つのNG表現を紹介します。事実以上の効能効果を期待させたり、誤解させたりする可能性があると、私たちは適切に化粧品を選べません。

荻野先生にNGとされている理由を教えてもらいました。

NG例1:肌の奥に浸透する・肌の内側までうるおう

――先生、「肌の奥に浸透する」「肌の内側までうるおう」ってNG表現なんですか?

通常、化粧品の成分が浸透するのは、科学的には角質層(角層)までとされています。

広告では、化粧品が浸透するのは肌の角質層までとわかるようにしなければなりません。肌の奥・深部・内側といった表現は、角質層を超えて入り込んでいくかのように誤解させる表現であり、ガイドラインでは禁止された表現です。

――ですが、化粧水や美容液の広告ではよく見かけます

大抵の場合、「肌の奥に浸透する」「肌の内側までうるおう」等の表現があれば、近くに「※角質層まで」といった注記があるはずです。ルールでは、範囲が肌の表面までだと消費者にちゃんと伝えられているかがポイントになります。

テレビCMやネットの動画広告でも、肌に成分が浸透するイメージが流れることがありますね。該当のシーンには注記、または肌表面までの浸透であるとわかるようになっているはずです。

とはいえ、こうしたルールが守られていない広告も、まだまだ多い印象です。

NG例2:肌が白くなる・アンチエイジングできる

――美白やアンチエイジングをうたった商品は、効果が高そうに見える広告が多いですよね

美白化粧品やエイジングケア化粧品はたくさんありますが、中には行き過ぎた広告も見かけます。肌が白くなる(明るくなる)、アンチエイジングできるといった表現で、これらは広告のルール違反となります。

――アンチエイジングは流行語にもなったほど有名です

アンチエイジングと聞くと、年齢によるシワ・シミなどの症状を改善できる期待を持ってしまいますよね。実は、化粧品は医薬品ではないので、身体の変化をうたうことはできないのです。

少し難しい表現になりますが、身体の組織機能の増強・増進といった効能効果は、化粧品でありながら「医薬品的な効能効果を標ぼう」していると見なされます。化粧品は、どのような体の変化も認められていません。シワ・シミの改善を想像してしまうアンチエイジングも、化粧品の効能効果としてはNGになります。

――美白化粧品の「美白」効果もだめなんですか?

美白化粧品の広告には、例えば「日焼けによるメラニンの生成を抑える」といった縛り表現が添えてあるはずです。肌そのものが白くなるのではない、とわかるようになっていれば大丈夫です。

なお、「肌が白くなる」という表現は、メイクアップによる効果であれば認められています。事実としてメイクアップによって白く見える場合、表現として許容される場合があります。

NG例3:天然成分だから安心・無添加で肌に優しい

――「天然成分だから安心」「無添加で肌に優しい」とうたう広告は信じていいですか?

化粧品の広告では、その商品が確実に安全であるかのような表現はNGとされています。なぜなら、化粧品は体質や肌質によって合う・合わないが出るものだからです。

「天然成分だから安心」「無添加で肌に優しい」とまで言ってしまうと、安全を保証しているととらえられてしまうでしょう。

――天然成分が配合された化粧品、無添加化粧品は、肌に優しいイメージがあります

天然成分が配合されているから、無添加だからといって、必ず肌に優しいとは言えないですよね。それこそ、人によって合う成分・合わない成分がありますし、天然成分の中にも刺激の強いものはあるでしょう。

言葉のニュアンスで何となく安全をはかるのではなく、自分に合った化粧品を見つけていくのが良いと思います。

NG例4:皮膚科医〇〇先生おすすめの化粧品

――最近は、皮膚科医の先生が美容雑誌などで化粧品をおすすめしていますよね

皮膚科医が推薦する化粧品であれば、多くの人から信頼を得やすいですね。ただし、化粧品広告のルールから外れていることもあるので注意が必要です。

化粧品の広告では、医師や薬剤師などの医薬関係者、美容師などが商品を「推薦」することは禁じられています。影響力が大きく、それゆえ安易に信用してしまう消費者も多くなるためです。

美容雑誌の場合、純粋な愛用品を紹介しているなら広告にはあたらないと思います。ただし、当人が販売者(利害関係者)であるなら、広告のルールから外れていると見なされるでしょう。

NG例5:「シミ・シワが薄くなりました!」

――広告の口コミで「シミ・シワが薄くなりました!」と書かれていると信じてしまいます

たとえ実体験を語っている口コミであっても、化粧品の広告である限り、身体の組織機能の増強・増進は表現できません。

繰り返しになりますが、化粧品の合う・合わないには個人差があります。数人程度の口コミで効能効果は一般化できないので、広告表現としてはNGです。

広告で「シミ・シワが薄くなりました!」「〇kgも痩せました!」などの実体験が口コミとして掲載されていても、私たちが同じ効能効果を得られる保証はありません。その広告を信じて購入した消費者は損をしてしまいます。

口コミや体験談は参考程度にとどめておきましょう。

なぜ化粧品の広告にはNG表現があるの?

荻野先生に、化粧品広告におけるNG表現について解説してもらいました。5つのNG表現はほんの一例です。

では、なぜ化粧品広告にはNG表現があるのでしょうか。何を基準に広告表現は判断されているのでしょうか。引き続き荻野先生にお話を伺いました。

化粧品広告の表現ルールについて説明する、弁護士の荻野先生

――化粧品広告の表現ルールは、何によって決められているのですか?

化粧品の広告に関わってくる法律は、主に次の2つです。

  • 薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)
  • 景表法(景品表示法)

広告の表現ルールは、これら法律をもとに定められています。

医薬品や化粧品に関するルールは薬機法です。化粧品は肌に直接塗るものですから、景表法だけでなく薬機法の厳しいルールも適用されます。

――薬機法や景表法は何のために存在するのでしょうか

製造側と消費者では、そもそも持っている情報に格差があります。

化粧品であれば、製造側(販売者)は商品にどんな成分が入っているか、どんな肌悩みに有効かなどすべて知っています。しかし、私たち消費者は、それが正しいのかどうか判断できません。

よって、定められたルールのもと、製造側は正しく情報提供をしましょうとなっているわけです。商品を売りたいがために、消費者を誤解させるような訴求はできませんと法律で決められています。

法律を守ることは、消費者だけでなく、製造側にも良い事のはずです。本当に良い商品を売っている企業が、嘘や誇大な表現の広告に埋もれることもないからです。

――売る側と買う側を適切に結びつけるため、広告表現のルールは存在しているのですね!

それでも、薬機法や景表法に違反する広告事例は後を絶ちません。摘発されたものもあれば、潜り抜けて世に出てしまっているものもあります。

過去に問題になった化粧品広告の例をいくつか見てみましょう。

※違反例では個別の情報を特定する直接的な表現を伏せています。

薬機法に違反した化粧品広告の例

違反例1

A社が販売する化粧水の広告で「表情ジワの原因である神経伝達物質の過剰な分泌を抑え、筋肉の緊張を緩和し、表情ジワを改善する効果があります」という表現が指摘されました。

この広告には、化粧品には認められていない身体の組織機能の増強・増進に触れる表現が複数あります。「神経伝達物質の過剰な分泌を抑え」「筋肉の緊張を緩和」「表情ジワを改善」がそうです。

薬機法では、化粧品に認められた効能効果の範囲というものがあります。例えば、「肌をひきしめる」や「肌にハリを与える」、「乾燥による小ジワを目立たなくする」といった表現は、化粧品の範囲として認められています。

A社の広告は、その範囲を超えた表現であったため違反となりました。

化粧品に認められた効能効果の範囲内か範囲外かは、消費者ではなかなか気づけないですよね。

違反例2

B社の「薬用まつ毛美容液」が広告規制の対象となりました。まつ毛が薄い・短い人向けの商品として売られており、人気がありました。

この広告には2つの問題がありました。

まずは「薬用」という表現。名称に薬用とつけていいのは、医薬部外品の承認を受けた化粧品のみです。医薬部外品は、医薬品ほど強くはないが、特定の効果が認められているものと薬機法では定義されています。

B社のまつ毛美容液は医薬部外品の承認を受けていなかったために問題となったのです。調べたところ、まつ毛美容液で医薬部外品の承認を受けた商品は見つかりませんでした(2021年10月時点)。

もう一つは「まつ毛が薄い・短い人向け」として広告されていた点です。この表現は、増毛や育毛、発毛の効果を暗示しているととれますね。

増毛や育毛を直接言及していなくても、消費者は効果を期待して購入してしまうでしょう。結果、消費者が被害を被ってしまうので、広告の表現としては違反です。

景表法に違反した化粧品広告の例

違反例3

C社はウェブサイトで5,000円の化粧水購入者全員に、期間限定で2,000円相当の美容液ミニボトルをプレゼントするキャンペーンを実施しました。

景表法(景品表示法)の景品のルールに違反した広告例になります。

景表法では、どのような商品であっても過大な“おまけ”をつけることは禁じられているからです。

今回のように全員にプレゼントする場合、提供できるおまけは本体商品の販売価格の20%相当までとされます。C社は5,000円の化粧水に2,000円相当のおまけをつけ、購入金額の上限(今回の場合は1,000円)を超えてしまいました。

おまけの比重が大きくなってしまうと、本体よりもおまけ目当ての消費者が増えます。これがまかり通ってしまえば、おまけで購入者を集めればいいわけなので、本体である商品の開発努力を怠る企業も出てくるかもしれません。

もう一つ注意したいのは、期間限定キャンペーンであることです。

今回の例は、おまけの上限についての違反でした。しかし、もしC社が期間限定としながら実際はずっとキャンペーンを行っていたなら、こちらも景表法違反となります。

消費者に今すぐ購入をうながすために嘘をついてはいけない、ということですね。

過去に問題となった化粧品の動画広告

違反例4

D社は家庭用美容機器の動画広告で、使用前後の比較画像と共に「たった1ヵ月で、お腹周り-9.0cm!」と表示しました。

このD社の動画広告が問題になった原因は、あたかも美容機器のみで-9.0cmが実現できたとうたった点にあります。

景表法では、事実に反する広告は許されません。消費者庁の調査が入った際、本当にこの美容機器のみで痩せられたと証明できなければ、違反として罰則を受けることになります。

D社のような事例は、特に動画広告でよく見かけます。このような広告は、おおむね怪しいと思っていいです。

消費者庁の指摘が入らなくても、いかにも怪しい広告は消費者も疑問に思いますよね。過激な表現は炎上のリスクにもなるので、企業側もリテラシーを高めていく必要があります。

今の世の中、行政の方だけを向いて仕事をしていては成り立ちません。消費者に誠実であることこそが、信頼を勝ち得る近道ではないでしょうか。

Q&A・自分に合った化粧品を選ぶためのポイント

化粧品を選ぶためのポイントを説明する、弁護士の荻野先生

世の中には、数えきれないほどの化粧品広告があります。中には、明確な違反ではないけれど、消費者の誤解を招きかねない表現も少なくありません。

広告の情報を正しく読み、自分に合った化粧品を選べるようになりたいですね。

消費者である私たちは、どんな点に注意して化粧品広告から情報を得ると良いのでしょうか。荻野先生に聞いてみましょう。

口コミの情報を信じてもいいですか?

口コミは参考になりますが、完全に信じてしまうのは避けたいですね。

化粧品は肌に直接塗るもので、体に影響します。一人ひとり合う・合わないがあるので、口コミで絶賛されていたからといって、リスクがないわけではありません。

また、リアルな愛用者の口コミがある一方で、ステルスマーケティングが紛れ込んでいる場合もあります。容易に判別できないものも多いですよね。

以上の理由からも、口コミは鵜呑みにせず、使用方法や使用感を参考にする程度にとどめるといいでしょう。

「購入者の90%以上がリピーター」だったら安心?

購入者の〇%以上が満足、あるいはリピーターという表現はよく見かけますが、鵜呑みにはしない方がいいでしょう。

まったくの嘘を言っている広告はないと信じたいですが、100%真実であるとも言い切れないのが現状です。

例えば、90%のリピーターの算出方法はごまかしが可能です。何年も前のデータかもしれないし、母数がごく少数かもしれません。

ぱっと見で映える数字だけに流されず、その化粧品は本当に肌悩みに合っているか、欲しいと思えるかなどを考えたいですね。

有効成分と美容成分は同じですか?

有効成分と美容成分は違います。

有効成分とは、薬機法に基づき、厚生労働省が医薬部外品の有効な成分として承認したものです。

有効成分の効果は、厚生労働省の厳しい審査を経て認められたものと覚えておきましょう。有効成分は医薬部外品に配合されているので、化粧品では認められてないはずです。

一方の美容成分は、販売者が美容に有効と考えて配合したものです。美容成分の名称は販売者によって異なります。

記事と広告の見分け方ってありますか?

例えば、GoogleやYahoo!などの検索結果なら、広告と記事は分けられています。また、新聞やウェブサイトでも「PR」で広告記事とそうでない記事を分けていれば、見分けられるでしょう。

しかし、それ以外では、消費者が広告かどうかを見分けるのは困難ではないでしょうか。実際のところ、企業が制作費を払って書かれた記事風の広告も多いと思います。

記事と広告を見分けられないなら、書かれている情報から自分に合った化粧品かどうかを考えることが大事ではないでしょうか。

誤って定期購入を注文してしまったら…?

意図しない買い物をした時に思い出すのは、「クーリングオフ制度」ではないでしょうか。しかし、通信販売にはクーリングオフはありません

クーリングオフ制度は、訪問販売や電話営業など一方的なセールスで、冷静に考える間もなく契約させられた場合など、一定の類型の取引だけで利用できます。

通信販売で誤って定期購入してしまったら、契約内容に従って解約手続きするしかありません。契約上の継続期間を取り消すことはできないので注意しましょう。

こうしたことを防ぐためにも、注文前には必ず内容を確認してください。単品なのか定期なのかをチェックして購入を決定しましょう。

定期購入を注文する場合も、事前に解約条件をチェックしておくといいですよ。基本的なことではありますが、自身で対策することが大切だと思います。

【まとめ】化粧品広告から正しく情報を読み取ろう

弁護士の荻野先生と一緒に、化粧品広告で禁止されている表現を見てきました。消費者に誤解を与えかねない広告を見分けるヒントにしてくださいね。

私たち消費者は、広告に書かれた内容の真偽は判断できません。広告の情報を鵜呑みにするのではなく、自分の肌質・肌悩みに合った商品かどうかを、自分でしっかり考えて購入できるようになりたいですね。

化粧品広告の表現ルールのもとになっている薬機法や景表法は、販売者と消費者を適切につなぐためにあります。NARITAIも、一人ひとりの肌質・髪質・エイジングサインなどの悩みと真摯に向き合い、皆さんとコスメの良い出会いを応援していきます。

正しく価値ある情報を届ける

「NARITAI(ナリタイ)」は、“キレイになりたい”すべての人を応援します。正しく価値ある情報を通じて、スキンケアやメイクアップを楽しんでもらいたいと願っています。

正しく価値ある情報を届けるため、記事づくりでは公正な視点を大事にしています。

誤った知識を提供しない、読者の不利益となる訴求をしないため、薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)や健康増進法等で定められたルールを順守いたします。

化粧品等の適正広告ガイドライン

NARITAI運営チームは賛助会員として東京化粧品工業会に参加しています。日本化粧品工業連合会(JCiA)の活動に賛同し、化粧品等の適正広告ガイドラインを順守します。

独自の制作ライン・弁護士チェック

薬機法、健康増進法、景品表示法を理解し、広告ガイドラインで定められた表現を守るため、薬事法管理者監修のもと独自のガイドラインを作成しています。ライター・編集者はこのガイドラインを通して執筆・編集・校正作業を行います。

また、制作した記事は、すべて弁護士による最終チェックを通します。誤解させる表現になってないか、薬機法等に触れていないかなどを確認いたします。

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